住宅ローンの借り換えを検討し始めると、まず壁にぶつかるのが「結局いくら得になるのか、どう計算すればいいのかわからない」という問題です。
2026年は日銀の追加利上げで変動金利が上昇し、借り換えの問い合わせが増えています。実際、ハウスメーカーの営業担当者と資金計画の話をすると、「借り換えを検討しているが、諸費用まで計算していない」という施主の方が多いと感じます。
この記事では、諸費用込みのシミュレーション方法、損益分岐点の計算式、住宅ローン控除への影響、借り換えできないケースまで整理します。金利差だけを見て飛びつく前に、ここで一度数字を確認してください。
住宅ローン借り換えシミュレーションの結論|諸費用込みで「得になる金利差」は0.3%以上が目安
借り換えで得になるかどうかは、金利差・残高・残期間・諸費用の4つが絡み合って決まります。
よく「金利差1%以上でないと得しない」と言われますが、これは古い目安です。ネット銀行の台頭で借り換え諸費用が下がった結果、金利差0.3%でも条件次第で数十万円単位の節約になるケースが増えています(モゲチェック、2026年5月)。
ただし、金利差だけを見て「得になりそう」と判断するのが最大の落とし穴です。諸費用を回収できないまま終わるケースもあります。
得になる3条件の目安
- 残高:1,000万円以上
- 残期間:10年以上
- 金利差:0.3%以上
3つとも満たしていれば、少なくとも試算する価値があります。
金利差0.3%・0.5%・1%で削減額はどう変わるか
残高2,000万円・残期間25年の条件で、諸費用控除前の利息削減額の目安を比較します。
| 金利差 | 月々の削減額(目安) | 25年間の削減額(目安) |
|---|---|---|
| 0.3% | 約3,000円 | 約90万円 |
| 0.5% | 約5,000円 | 約150万円 |
| 1.0% | 約10,000円 | 約300万円 |
金利差0.3%でも25年間で約90万円になります。ただしこれは諸費用を差し引く前の数字です。諸費用の相場(後述)を踏まえると、金利差0.3%は「得になるかギリギリのライン」と見てください。
残高・残期間が大きいほど効果は増える
残高が多く、残期間が長いほど借り換えの効果は大きくなります。逆に言えば、残高が少なく残期間が短いほど、諸費用を回収できない可能性が高くなります。
2026年に借り換えを急ぐべき理由|金利上昇局面で「待ち」のコストが増えている
2025年12月、日銀は追加の政策金利引き上げを決定しました。これを受けて主要銀行の変動金利は2026年に入ってから0.15〜0.25%前後引き上げられており、変動金利で借りている方の返済負担は着実に増えています。
ここで見落としがちな点があります。今より金利が上がることを懸念して「借り換えても意味がないのでは?」と感じる方がいますが、それは違います。現在のローンも同じ分だけ金利が上がるので、金利差は縮まりません。借り換えで金利を下げておけば、さらなる利上げが来ても有利な状況は変わりません。
逆に言えば、高い金利のまま返済を続けた月数だけ、削減できたはずの利息を手放していることになります。
【編集部の見解】 積水ハウスで家づくりの打ち合わせをしていると、「以前から借り換えを考えていたけど、面倒で後回しにしていた」という方に何度か会いました。金利が低かった時期に変動で借りた方でも、2024〜2025年の利上げを経て現在のローン金利が1.2%を超えているなら、試算だけでも損はしません。「いつかやろう」を続けると、その期間の利息差がそのまま損失になります。
【計算方法】諸費用を含めた「本当の得額」の出し方

諸費用込みで「本当の得額」を計算することが、借り換え判断の核心です。
金利削減額だけを計算しても、諸費用を差し引かなければ正確な判断はできません。「得になりそう」と思って手続きを進めた後で、思ったより得しなかったと気づくケースの多くが、このステップを省いています。
借り換えにかかる諸費用の内訳
借り換えでは、新たなローンを組む際に次の費用がかかります。
| 費用の種類 | 相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 融資手数料(事務手数料) | 借入額の2.2%前後 | ネット銀行に多いタイプ |
| 保証料 | 借入額の0〜2%前後 | 不要な銀行も増えている |
| 抵当権抹消・設定費用 | 2〜5万円程度 | 司法書士費用含む |
| 印紙税 | 2〜6万円程度 | 借入額による |
| 繰り上げ返済手数料 | 0〜5万円程度 | 現在の銀行に支払う |
合計の目安は借入額の2〜3%程度です。残高2,000万円で借り換える場合、諸費用の合計は40〜60万円になることが多いです。
【知っておきたいポイント】 融資手数料が「借入額の2.2%」タイプのネット銀行は、残高が多いほど諸費用が高くなります。一方、「定額型(数万円)」の銀行は残高が多い人に有利です。残高1,500万円を超えるなら定額型の銀行を探す価値があります。
損益分岐点(元を取れる年数)の計算式
諸費用を年間の利息削減額で割ると、「何年で元が取れるか」が分かります。
損益分岐点(年)= 諸費用の合計 ÷ 年間の利息削減額
損益分岐点が残期間を下回っていれば、借り換えは得になります。
計算例:残高2,000万円・金利差0.5%
年間の利息削減額:約10万円(月約8,300円×12ヶ月) 諸費用の合計:約50万円 損益分岐点:50万円 ÷ 10万円 = 5年
残期間が5年以上あればこの条件では得になります。残期間が20年あれば、5年で元を取った後の15年間(約150万円分)がそのまま節約になります。
借り換えシミュレーション比較表|残高・金利差・残期間別
実際の数字で判断できるよう、条件別の利息削減額(諸費用控除前)をまとめました。
残高別・金利差別の利息削減額(残期間20年)
| 残高 | 金利差0.3% | 金利差0.5% | 金利差1.0% |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 約30万円 | 約50万円 | 約100万円 |
| 2,000万円 | 約60万円 | 約100万円 | 約200万円 |
| 3,000万円 | 約90万円 | 約150万円 | 約300万円 |
残期間別の効果の違い(残高2,000万円・金利差0.5%)
| 残期間 | 利息削減額(目安) | 諸費用(目安) | 実質的な得額 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 約50万円 | 約45万円 | 約5万円 |
| 20年 | 約100万円 | 約45万円 | 約55万円 |
| 25年 | 約130万円 | 約45万円 | 約85万円 |
残期間10年では、金利差0.5%でも実質的な得額は約5万円程度にとどまります。残期間が短い場合、借り換えの優先度は下がります。
借り換えには「保障の見直し」というもう一つのメリットがある
借り換えでは新たにローンを組むため、団体信用生命保険(団信)に再加入します。これを利用して、現在の団信よりも保障内容を充実させられる場合があります。
たとえば、現在の団信が死亡・高度障害のみ保障の基本型でも、借り換え先でがん保障や就業不能特約を付加できることがあります。金利削減だけでなく、保障の見直しも借り換えの選択肢に入れる理由になります。
【注意】 団信への再加入には健康状態の告知が必要です。借り換え時点での健康状態によっては、加入できない場合や、特定の保障が除外される場合があります。現在の団信を解約する前に、借り換え先の団信審査結果を必ず確認してください。
借り換えができない・損になるケースに注意
「借り換えれば必ず得になる」とは限りません。条件によっては損をする、そもそも借り換えができないケースもあります。
残高・残期間が少ないと得しにくい
残高が少なく残期間が短いと、利息削減額の絶対値が小さくなり、諸費用を回収できません。残高500万円以下・残期間5年以下では、借り換えのメリットはほぼ期待できません。損益分岐点の計算式で確認してみてください。
借り換えできない主な条件
借り換えでは新たなローンの審査が入ります。次の状況に該当すると、借り換え自体ができないことがあります。
残高が銀行の最低融資額を下回る(多くの銀行で100〜500万円が下限)、過去に返済の遅延や滞納がある(信用情報に記録が残る)、物件の担保評価が残高を大きく下回る(築年数の古い物件など)、勤続年数が短いまたは収入が不安定な状態である、といった条件です。
【知っておきたいポイント】 現在のローンで返済が滞ったことがある場合、信用情報機関に記録が残っており、借り換え審査で落ちる可能性があります。審査に落ちること自体も信用情報に影響する場合があるため、まず自分の信用情報を確認してから動くと安心です。
借り換え後の住宅ローン控除(減税)はどうなる?
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、借り換えをしても引き続き受けられます。ただし、条件を満たしていなければ控除が消えるリスクがあります。
最も注意すべきは「残期間10年未満」への短縮
住宅ローン控除の適用要件のひとつに、「借り換え後のローンの返済期間が10年以上あること」があります。
残期間が15年の状態で借り換えをする場合でも、借り換え後の返済期間を10年未満に設定すると、控除の適用が終わります。借り換え前の控除残年数がどれだけ残っていても同様です。
借り換えで控除を継続するための条件
借り換え後も住宅ローン控除を受けるためには、借り換えたローンが従前のローンの返済を目的とするものであることを証明する必要があります。借り換えで受けた資金を住宅以外の用途に充てると、控除の対象外になります。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 残期間 | 借り換え後の返済期間が10年以上あるか |
| 資金使途 | 借り換え資金を住宅ローンの返済以外に充てていないか |
| 物件要件 | 床面積など従前の要件を引き続き満たしているか |
【知っておきたいポイント】 住宅ローン控除の残年数が多く残っている人ほど、借り換えによる節税効果を失うリスクに注意が必要です。控除額が年間数十万円になる場合、単純な金利削減だけで判断せず、控除額の総額と合わせて計算することをおすすめします。
変動→固定への借り換えは得か損か?2026年版の判断基準

「金利上昇が怖いので固定に借り換えたい」という相談は、2025〜2026年で増えています。ただし、これは目的を明確にしないと判断を誤ります。
現在の変動金利と固定金利の差
2026年時点で、主要ネット銀行の変動金利は0.3〜0.7%台が多く、フラット35(全期間固定)の金利は残期間20年の場合で1.9%前後です(フラット35最頻金利、2026年2月時点)。
変動から全期間固定に借り換えると、金利が1%以上上がる計算になります。その分、月々の返済額は増えます。
どんな人が変動→固定への借り換えを検討すべきか
固定への借り換えが合う人の条件は次のとおりです。
返済額が増えても家計が回る余裕がある、将来の収入が不安定になるリスクがある(転職予定・育休取得予定など)、「毎月いくら払うか確定したい」という安心感を優先したい、という場合です。
逆に、「返済額を減らしたい」という目的なら、変動→固定への借り換えは目的と合いません。2026年時点の固定金利で借り換えると、ほぼ確実に月々の支払いは増えます。
変動金利のままで借り換えるほうが得になるケース
現在の変動金利が1.0%を超えている場合、同じ変動型でネット銀行に借り換えると0.5%台まで下げられるケースがあります。「金利上昇リスクを下げたい」という目的よりも「今の金利負担を下げたい」という目的なら、同じ変動型での借り換えのほうが効果は出やすいです。
【編集部の見解】 ハウスメーカーの資金計画の話の中でよく出てくるのが「固定に乗り換えておけばよかった」という後悔の話です。ただ、固定への借り換えで月々の返済が増えた後に後悔した方も同数います。結局のところ、「金利リスクを取るかどうか」は各家庭の収入の安定性と、どちらのリスクが怖いかで決まります。数字だけでなく、家計の方針として決める問題だと思っています。
借り換えシミュレーションの手順|4ステップで進める方法
実際に借り換えを検討する際の手順を整理します。
STEP1:現在のローン条件を整理する
手元のローン契約書や返済予定表を確認し、現在の金利(変動・固定の種別)、残高、残りの返済期間、月々の返済額、現在の銀行の繰り上げ返済手数料を把握します。この5つが揃えば、損益分岐点の計算ができます。
STEP2:借り換え先の金利を比較する
複数の銀行・ネット銀行の金利を比較します。1行だけで判断しないことが重要です。住宅金融支援機構が提供する「住宅ローンシミュレーター」や各銀行の公式サイトで試算できます。
比較するポイントは、適用金利(変動・固定・固定期間選択型)、融資手数料の種類(定率型か定額型か)、保証料の有無、団信の保障内容の4つです。
STEP3:諸費用込みの損益分岐点を計算する
STEP1・2で集めた情報をもとに、前述の計算式で損益分岐点を出します。損益分岐点が残期間を大幅に下回っていれば、借り換えを進める価値があります。
住宅ローン控除の残年数が多い場合は、控除額の削減分も加えて総合的に計算してください。
STEP4:事前審査を申し込む
候補の銀行が絞れたら、事前審査(仮審査)を申し込みます。事前審査は無料で、2〜3行に並行して申し込むことも一般的です。事前審査の結果を見てから本審査・契約へ進みます。
【編集長より】 事前審査は複数行に並行して申し込んで問題ありません。「複数の銀行に申し込むと信用情報に傷がつく」と心配する方がいますが、住宅ローンの事前審査では一定期間内の複数申し込みは比較検討中として扱われるケースが多いです。過度に心配せず、しっかり比較することをおすすめします。
【価格・費用についての注意】 この記事で示している利息削減額・諸費用の目安は、借入条件・金融機関・時点によって変わります。最終的な金額は各金融機関のシミュレーターや窓口で確認してください。
まとめ
- 得になる目安は「金利差0.3%以上・残高1,000万円以上・残期間10年以上」の3条件
- 諸費用(借入額の2〜3%程度)を差し引いた損益分岐点を必ず計算する
- 2026年は金利上昇局面。待ち続けると削減できたはずの利息差がそのまま損失になる
- 借り換え後も住宅ローン控除を受けるには、返済期間が10年以上残ることが条件
- 変動→固定への借り換えは返済額が増える。「安心を買う」目的なら意味があるが、「返済を減らす」目的なら逆効果になりやすい
- 残高500万円以下・残期間5年以下・返済遅延ありの場合は、借り換えが難しいかできても得しにくい
まずは手元の返済予定表を引っ張り出して、現在の金利と残高を確認することから始めてみてください。計算してみて初めて「動くべきかどうか」が見えてきます。
家づくり全体の資金計画を相談したい方は、ハウスメーカー相性診断で方向性を整理することから始めてみましょう。積水ハウスを含む16社の比較はハウスメーカー比較ガイドでも確認できます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 借り換えの目安は金利差何%ですか?
一般的な目安は0.3%以上です。かつては「1%以上でないと得しない」と言われていましたが、ネット銀行の普及で借り換え諸費用が下がったため、0.3%でも条件次第で数十万円単位の節約になるケースが増えています。ただし金利差だけでなく、残高・残期間・諸費用の組み合わせで判断してください。
Q. 借り換えにかかる諸費用の相場はいくらですか?
借入残高の2〜3%程度が目安です。残高2,000万円であれば40〜60万円程度になることが多いです。融資手数料の種類(定率型か定額型か)や保証料の有無によって大きく変わるため、必ず借り換え先の銀行に確認してください。
Q. 残高がいくら以下だと借り換えは難しいですか?
多くの銀行では最低融資額が100〜500万円に設定されています。残高がこれを下回ると借り換え自体ができません。残高が少ない場合は諸費用を回収できないケースも多く、500万円以下では慎重に損益分岐点を計算することをおすすめします。
Q. 借り換え後も住宅ローン控除は受けられますか?
借り換え後も控除は継続できますが、条件があります。借り換え後の返済期間が10年以上であること、借り換え資金を住宅ローンの返済以外に充てないこと、が主な要件です。返済期間を10年未満に短縮すると控除が消えるため、残期間が短い方は特に注意してください。
Q. 変動金利から固定金利に借り換えるメリットはありますか?
返済額を固定できる安心感は得られますが、2026年時点では変動→全期間固定への借り換えで月々の返済額が増えることが多いです。「金利上昇リスクを避けたい」「返済額を確定させたい」という目的なら意味がありますが、「返済額を減らしたい」なら逆効果になりやすいです。
Q. 事前審査は何行まで同時に申し込めますか?
法律上の制限はありません。2〜3行に並行して申し込むことが一般的です。住宅ローンの事前審査は比較検討中として扱われるケースが多く、「複数行に申し込むと信用情報に傷がつく」という心配は過度にする必要はありません。ただし短期間に多数の申し込みをすることは避けたほうが無難です。

