「長期優良住宅」という言葉、聞いたことはあるけれど、具体的に何が違うのかよくわからない——そんな方は多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、長期優良住宅とは国が定める9つの基準をクリアした「お墨付きの高品質住宅」のことで、認定を取得すると住宅ローン控除の拡充や固定資産税の優遇など、総額で数十万円〜数百万円単位の金銭的メリットを受けられます。この記事では、認定条件の一覧・申請手続きの流れ・受けられる優遇制度を、家づくり初心者にもわかりやすく解説します。
この記事について iekatsu編集部(編集長 積水ハウス施主のホンネ 監修) iekatsu編集部が徹底リサーチのうえ執筆し、実際に積水ハウスで家を建築中の編集長が内容を監修しています。
長期優良住宅とは?普通の家との違いを一言で解説
長期優良住宅とは、「長く安全に住み続けられる家」として国が認定した住宅のことです。耐震性や断熱性など9つの基準を満たしたときに認定が下り、税の優遇や補助金を受けられます。
ひと言でいうと、「国のお墨付きをもらった高品質な家」です。
「認定住宅」と「一般住宅」の違い
認定の有無で、受けられる優遇制度に大きな差が出ます。
| 比較項目 | 長期優良住宅 | 一般住宅 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除(借入限度額) | 5,000万円 | 3,000万円 |
| 固定資産税の減額期間(戸建て) | 5年間 | 3年間 |
| 不動産取得税の控除額 | 1,300万円控除 | 1,200万円控除 |
| フラット35S(金利引き下げ) | 対象 | 対象外 |
| 地震保険料の割引 | 最大50%割引 | 割引なし〜10% |
| 補助金(みらいエコ住宅2026事業等) | 優先・上乗せ対象 | 対象外の場合あり |
長期優良住宅が国に認められる理由
日本の木造住宅はかつて平均寿命が約30年といわれ、古くなったら壊して建て直す「スクラップ&ビルド」が当たり前でした。欧米では100年以上使われる住宅が珍しくないことを考えると、これは大きなギャップです。この流れを変えるために2009年に生まれたのが長期優良住宅制度です。「壊すより、長く使える家を建てよう」という国の方針が背景にあります。
長期優良住宅の認定条件一覧(9つの基準)
長期優良住宅の認定を受けるには、以下の9つの基準をすべて満たす必要があります。共同住宅(マンション)にのみ適用される基準も含まれます。
1. 耐震性
耐震等級2以上、または免震建築物であることが必要です。一般的な住宅の耐震等級1(建築基準法の最低基準)より1ランク上の強度が求められます。なお、耐震等級3を取得すると地震保険料が最大50%割引になるため、等級3での申請を選ぶケースが多いです。
2. 省エネ性
省エネ性の基準は、2025年4月の法改正で引き上げられました。現在は断熱等性能等級5以上(UA値・ηAc値・結露対策)かつ一次エネルギー消費量等級6以上が必須です(2025年4月1日施行)。それ以前の基準だった等級4はすでに対象外となっているため、これから申請する場合は注意してください。
【知っておきたいポイント】 UA値は「家全体の断熱性能を数値で示したもの」です。数値が低いほど断熱性能が高く、おおよそ0.6以下が断熱等級5(ZEH水準)、0.4以下で等級6となります。一次エネルギー消費量等級6は、住宅性能表示制度における省エネ設備面での最高等級です。
3. 劣化対策
数世代にわたって住宅の躯体が使用できるよう、劣化対策等級3(最高等級)が必要です。具体的には、床下・小屋裏に点検口を設けることや、床下空間に330mm以上の有効高さを確保すること、木材の防腐・防蟻処理が求められます。
4. 維持管理・更新の容易性
配管・設備の点検や交換がしやすい構造であることが必要です。維持管理対策等級3が求められ、給排水管を床下に設ける場合はメンテナンス用の点検口が必須です。
5. 居住環境
良好な景観の形成や地域の居住環境の維持・向上に配慮した計画であることが求められます。地区計画や景観計画などの地域ルールに適合していることが条件です。
6. 住戸面積
一定の面積が確保されていることが必要です。
| 住宅の種類 | 必要面積 |
|---|---|
| 戸建て住宅 | 75平方メートル以上(床面積) |
| 共同住宅(マンション等) | 55平方メートル以上(床面積) |
なお、少なくとも1つの階の床面積が40平方メートル以上であることも条件です。
7. 維持保全計画
建築時から将来の維持管理・改修まで見据えた「維持保全計画」の作成が必要です。点検の時期・内容を定めた計画書を作成し、認定申請書類に添付します。認定後も少なくとも10年ごとの定期点検と、地震・台風時の臨時点検、その記録の保存が義務づけられます。
8. バリアフリー性(共同住宅のみ)
マンションなど共同住宅の場合、将来のバリアフリー改修に対応できる措置(共用廊下の幅員確保など)が求められます。戸建て住宅には適用されません。
9. 可変性(共同住宅のみ)
マンションなど共同住宅の場合、居住者のライフスタイルの変化に応じて間取り変更ができる措置が求められます。戸建て住宅には適用されません。
編集部のリアルな声
【編集部が調査して感じたこと】
「長期優良住宅」という名前から、最初は「特別な高級住宅のこと」だと思っていました。しかし調べてみると、大手ハウスメーカーの多くは標準仕様でほぼ基準を満たしており、追加費用がほとんどかからないケースも多いことがわかりました。「難しそう・お金がかかりそう」というイメージは、思い込みだったと感じています。実際、積水ハウスの標準仕様を調べたところ、シャーウッド構法・鉄骨ダイナミックフレームシステムのどちらも標準で長期優良住宅の基準をクリアしていました。
【編集長より】 積水ハウスで建築中の経験からいうと、長期優良住宅の申請はハウスメーカーがほぼ代行してくれます。「申請したい」と伝えるだけで動いてくれたので、施主側の手間はほとんどありませんでした。ただし、追加費用の有無は会社によって違うので、必ず契約前に確認することをおすすめします。
長期優良住宅の申請手続きと費用
長期優良住宅の認定申請は、家を建て始める前(着工前) に済ませる必要があります。完成してから「やっぱり認定を取りたい」はできません。この点だけは必ず覚えておいてください。
申請の流れ(ステップ別)
- ハウスメーカー・工務店に申請する意向を伝える(設計の打ち合わせ段階で)
- 登録住宅性能評価機関に技術的審査を依頼する(設計図書を提出)
- 適合証を取得する(審査に通ると発行される)
- 所管行政庁(都道府県・市町村)に認定申請を出す(適合証を添付)
- 認定通知書を受け取る
- 着工・建築スタート
- 入居後は維持保全計画に従い定期点検を実施・記録する
手続き自体はほぼハウスメーカーや工務店が代行してくれます。「長期優良住宅で建てたい」と一言伝えれば、あとはお任せできるケースがほとんどです。
申請にかかる費用の目安
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 技術的審査費用(登録機関への申請料) | 5万〜15万円程度 |
| 行政への認定申請手数料 | 1万〜6万円程度(自治体により異なる) |
| 書類作成費用 | ハウスメーカーが負担するケースも多い |
| 合計目安 | 6万〜20万円程度 |
申請費用だけ見ると高く感じるかもしれませんが、税優遇・補助金の合計と比べると多くのケースで回収できます。詳しくは次の章で説明します。
長期優良住宅で受けられる税優遇・補助金まとめ
認定を取得することで受けられる主な金銭的メリットを整理します。
住宅ローン控除(減税額の違い)
住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。長期優良住宅は借入限度額が一般住宅より大きく設定されています。
| 住宅の種類 | 借入限度額(2026年入居) | 最大控除期間 | 控除率 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 13年間 | 0.7% |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 13年間 | 0.7% |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 13年間 | 0.7% |
| 一般住宅(省エネ基準を満たさない場合) | 原則対象外 | — | — |
※2026年(令和8年)入居の場合の目安です。実際の控除額は所得税額やローン残高によって異なります。借入限度額の最新の整理は省エネ基準適合住宅とは?でも詳しく解説しています。
不動産取得税・固定資産税の優遇
不動産取得税:課税標準から控除できる額が、一般住宅の1,200万円に対して長期優良住宅は1,300万円に拡大されます。
固定資産税:新築住宅は一定期間、固定資産税が1/2に減額されます。長期優良住宅は戸建てで5年間(一般住宅は3年間)、マンションで7年間(一般住宅は5年間)適用されます。
登録免許税:所有権保存登記の税率が一般住宅の0.15%に対し、長期優良住宅は**0.1%**に軽減されます。
補助金「みらいエコ住宅2026事業」との併用
子育てエコホーム支援事業の後継として、2026年度は**「みらいエコ住宅2026事業(Me住宅2026)」が実施されています。長期優良住宅の新築は、地域区分1〜4で80万円/戸**、地域区分5〜8で75万円/戸が補助されます(既存住宅を除却して建て替える場合はさらに20万円加算)。
ただし対象世帯には条件があり、**子育て世帯(申請時点で18歳未満の子がいる世帯)または若者夫婦世帯(夫婦どちらかが39歳以下)**に限られます。世帯要件を満たさない場合は対象外になるため、契約前に必ず確認してください。
【注意】 補助金は予算上限に達し次第、受付終了となります。申請は原則ハウスメーカー・工務店が代行するため、「補助金を使いたい」という意向は契約・着工前の早い段階で担当者に伝えておくことが重要です。後継制度の経緯はすまい給付金は2026年に使える?でも整理しています。
長期優良住宅のデメリット・注意点
メリットが多く紹介されがちな長期優良住宅ですが、正直に言うと「向いていない人が取ると損をする」制度でもあります。以下のデメリットはきちんと把握しておいてください。
コストが上がる。しかも思ったより上がることがある
9つの基準を満たすために、一般住宅より建築コストが上がるケースがあります。目安は50万〜150万円程度ですが、もともとの仕様が低い工務店では200万円以上かかることもあります。
問題は「追加コストが税優遇・補助金を上回るケース」があることです。たとえば借入額が2,000万円以下で、住む期間も10年未満なら、認定取得にかかったコストを税優遇だけで回収するのは難しくなります。「なんとなく良さそうだから認定を取った」では後悔する可能性があります。必ず事前に収支シミュレーションをしてから判断してください。
点検・記録の義務は、ずっと続く
認定を受けた後は、維持保全計画に従った定期点検と記録の保存が義務になります。これは任意ではありません。
少なくとも10年ごとの点検が求められますが、点検費用は自己負担です。また、記録を適切に保管していないと、将来の売却時や増改築時にトラブルになる場合があります。「認定を取って終わり」ではなく、取った後の管理コストと手間が一生ついてくるという点を理解した上で判断してください。
対応できないハウスメーカー・工務店もある
すべてのハウスメーカーや工務店が長期優良住宅に対応しているわけではありません。特に小規模な工務店では、申請実績がなかったり、対応できないケースもあります。「この工務店で建てたいが、長期優良住宅も取りたい」という場合は、契約前に対応可否を確認するのが必須です。
【編集長より】 長期優良住宅は「取れるなら取っておいて損はない」という情報が多く出回っています。しかし実際には、借入額・居住期間・施工会社によっては費用対効果が合わないケースも存在します。「本当に自分に必要か?」をハウスメーカーのFP相談などで個別に確認することを強くおすすめします。
あなたは長期優良住宅に向いている?チェックリスト
当てはまったら検討あり・当てはまらなければ見送りも選択肢
以下の項目に多く当てはまる人ほど、長期優良住宅の認定取得がおすすめです。
認定取得をおすすめしたい人の特徴:
- 住宅ローンの借入額が3,000万円を超える予定がある
- 建てた家に20年以上住み続けるつもりがある
- 将来、子どもや孫に家を残す可能性がある
- 地震や台風など自然災害に備えた高耐久の家にしたい
- 光熱費を長期的に抑えたい
- ハウスメーカーや工務店がすでに長期優良住宅に対応している
見送りを検討してもよい人の特徴:
- 借入額が少なく、税優遇の恩恵が小さい(借入2,000万円以下など)
- 数年後に売却・住み替えを検討している
- 申請費用や追加コストが予算的に厳しい
- 希望する工務店が長期優良住宅の申請に非対応
まとめ
- 長期優良住宅とは、耐震性・省エネ性など9つの国の基準をクリアした認定住宅のこと
- 省エネ性の基準は2025年4月の法改正で引き上げられ、現在は断熱等性能等級5以上+一次エネルギー消費量等級6が必須
- 認定を取ると、住宅ローン控除の借入限度額引き上げ・固定資産税減額・みらいエコ住宅2026事業の補助金(最大80万円/戸)など総額で数十万〜数百万円の金銭的メリットがある
- 申請は着工前に行う必要があり、費用は6万〜20万円程度
- ただし追加コストが優遇額を上回るケースもあるため、事前の収支シミュレーションが必須
- 定期点検・維持保全の義務があるため、長く住み続ける予定がある人ほど向いている
まずは検討中のハウスメーカーや工務店に「長期優良住宅の認定は取れますか?追加費用はいくらですか?」と聞いてみましょう。この2つを確認するだけで、自分に合っているかどうかの判断がぐっと楽になります。まだメーカーが絞れていない方は、ハウスメーカー診断で方向性を整理することから始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 長期優良住宅の認定を取るのにいくらかかりますか?
技術的審査費用と行政への申請手数料を合わせて、6万〜20万円程度が目安です。ハウスメーカーによっては申請書類の作成費用を負担してくれるケースもあるため、契約前に確認しておくとよいでしょう。
Q. 中古住宅でも長期優良住宅の認定は取れますか?
既存住宅(中古住宅)でも、増築・改築をともなうリフォームの場合に限り「長期優良住宅化リフォーム」として認定を受けられる制度があります。ただし新築と比べて手続きが複雑で、すべての中古住宅が対象になるわけではありません。詳しくは国土交通省の公式サイトまたは専門家にご相談ください。
Q. 長期優良住宅にするとローン控除はいくら変わりますか?
借入限度額が省エネ基準適合住宅の3,000万円に対し、長期優良住宅は5,000万円に拡大されます。借入額・所得・ローン残高によって変わりますが、控除率はいずれも0.7%、控除期間13年間です。実際の控除額は個人の所得税額に上限があるため、税理士やハウスメーカーのFP相談で個別にシミュレーションすることをおすすめします。
Q. ZEH水準住宅との違いは何ですか?
ZEH水準住宅は断熱性能と省エネ設備に重点を置いた区分で、長期優良住宅は耐震性・劣化対策・維持管理のしやすさなど住宅の耐久性まで含めて9項目を満たす区分です。省エネ性能だけで見ると両者は近い水準(断熱等性能等級5以上)ですが、長期優良住宅のほうが満たすべき基準の範囲が広く、その分、住宅ローン控除の借入限度額やみらいエコ住宅2026事業の補助額も長期優良住宅のほうが大きく設定されています。
執筆: 積水ハウス施主のホンネ(iekatsu運営者)

